文章がうまく書けなくて悩んでいて描写がうまく書きたいなと思い、自然を描写していそうな本を探していた時に、この本に出合った。
著者である星野道夫さんはアラスカの自然を撮り続けていた写真家でした。
高校生の時に出会った写真に魅せられて、アラスカ行きを切望し、アラスカの大学に入学。卒業後もアラスカに留まり、アラスカの野生動物を撮り続けた。
本作品は、ノンフィクションの実体験を書き連ねたもの。
彼が表現する狼やトナカイ、熊はまるでそこにいるかのようにその光景を文章で見せてくれる。
アラスカ野生生物局の局員たちとクマの生態研究に同行するときの出来事。冬眠している野生のクマにGPSを付け替えるためときのお話は、自然と手に汗を握った。
例年であれば、雪面にじっと目をこらすと小さな呼吸穴が見つかるのだが、今年は雪が深過ぎる。誰もが緊張し、あたりにそれらしき気配を捜していた。知らないうちに、寝ているクマの真上に立っているかもしれないからだ。
(中略)
スティーブが上半身を穴の中に入れ、熊を入口まで動かそうとしているが、木の根にはまって自分の身体が抜けなくなり、足を宙でバタバタさせている。ぼくたちは吹き出してしまうが、スティーブは真剣だ。目の前にあるのは、多分、麻酔が効いているクマの顔なのだ。
旅をする木 より
麻酔を打ち起きないようにしたからといって、いつ起きてもおかしくない状況で仲間とともに作業にあたる様子に私は息を呑んだ。
描写がありありと細かく書かれていて、本を読んでいるだけなのに、その場に居合わせたかのようなリアル感を与えてくれる。
創作した物語ではなく、彼自身の目の前で起こったこと、実体験だからこそここまで書けるのだろう。
彼の写真も素敵だが、写真を撮るまでの彼が経験したことを、文字に起こす技術も素敵だ。
ただ、これを読んでも私の文章力は上がらなかった。
タイトル | 旅をする木 |
著者 | 星野道夫 |
出版 | 文藝春秋 |
出版日 | 1999/3/10 |
評価 |
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